赤外分光光度計と言えばFTIR分光計が主流となるが、
ラマン分光計にはいくつかの種類がある。
- マルチチャネル分散型分光計
- マルチチャネル・スキャン型分光計
- フーリエ変換型分光計
これらの違いは、回折格子で分光するか or マイケルソン干渉計とフーリエ変換を組み合わせて周波数解析を
行うかの違いである。
最近のラマン分光計は顕微鏡が装備されているものがほとんどである。顕微鏡は本来、小さい試料や部分を
測定すること、二次元マッピングやイメージング測定を目的としてきたが、ことラマンにおいては、測定操作が
容易になり、専門的な技術習得が不要となることも理由の1つとしてラマン顕微鏡がラマン分光計の主流と
なっている。いかにマルチチャネル分散型分光計の概略図を示した。ラマン分光計は、励起レーザ、
分光器、検出器、制御・計測用PCから構成されている。
A.分解能
分光器の受光側スリットを開けると、その間を限られた波長の光が通り抜ける。よって、
スリットの機械的な幅:W mmとスペクトル線幅(半値全幅:FWHM):Δνp−1には関係がある。
dν(=dν/dx :cm−1/mm)とdλ(=dλ/dx :nm/mm)はそれぞれ端数と波長を単位とした
逆線分散である。これは、焦点面において幅1mmに対応する波数や波長に対応しており、
分光器のマニュアルに記載されている。
B.スペクトルの横軸の校正
(1)絶対波数標準法
励起レーザ光の波長が正確に決定されているレーザーを光源としている場合に用いる方法である。
He-NeレーザーやArイオンレーザなどの気体レーザでは、レーザー光の波長が正確に決められている。
またネオンやアルゴンなどの原子発光スペクトルの波長は精密に測定されており絶対波数の標準として
使用されている。レーザ線の波長と標準として使用する発光線との差から絶対波数をラマンシフトに
換算する。
(2)ラマンシフト標準法
一方色素レーザや固体レーザなど発光線の波長が正確に決められていない光源を使用するときに、
それらのレーザの波長を標準ランプの発光線のラマンシフトをもとに較正するのが対辺なので、
ラマンシフト標準法を用いる。この方法のラマンシフトの標準として最も頻繁に使用される物質は
インデンである。このラマンシフトは正確に測られている。1の位までの精度はある。しかし、
インデンは大気中で酸化されやすく、酸化物は強い蛍光を発するのでラマン信号が見えないときは
蒸留させて使用する。
C.スペクトルの縦軸の較正
ラマン散乱の絶対強度を測定することは、ほとんどの場合できないので
スペクトルの縦軸は相対強度で表示する。相対強度は、検出器の分光感度、検出器の感度の不均一性、
回折格子の分光感度、光学フィルターの透過率などの影響を受ける。
- 回折格子の偏光を解消する為に、入射スリットの前に偏光解消板を入れる必要がある。
- 標準ランプ、標準物質の蛍光スペクトル、水素や重水素の回転ラマンスペクトル強度で較正。
- NIST準拠のタングステン・ハロゲン標準光源(300〜1500nm)が、発光面が小さく、発光源を分光器の
光軸上に固定することが出来るので正確な較正ができる。