色収差
色消しダブレットの設計
たぶんもっとも見かけるタブレットは、接着タイプとフラウンホーファー色消しレンズだろう。
これは、クラウンガラスの両凸レンズとフリントガラスの凹平(おおむね平)レンズが全面で接触している。
クラウンガラスは傷つきにくいので前側に使うのが一般的である。さらに、凸平であるから適当なガラスを選べば球面収差と
コマ収差ともに補正できる。さて、焦点距離50mmのフラウンホーファー色消しレンズを設計する。
複合レンズの式
と
2色の色消しレンズを
を解くと、
となり、いくつかのガラス選択が考えられる。
つまり、要素レンズに強く曲がった面を必要とする短い焦点距離を避けるには
V1d-V2dを大きくすることで焦点距離を大きくすることができる。
およそ20程度が便利である。今回のアッべ数に関してはC線とF線とd線に関してのアッべ数とする。
そして、色消しに関してはC線とF線に関して行う。
C線やF線とは高精度に波長が分かっている特性線のことを指す。フラウンホーファー線(Fraunhofer lines)と呼ばれる
これらの特性線は、必要となる基準波長をスペクトル全域にわたって提供する。下の表にいくつかの波長に対してまとめる。
ガラスレンズの各波長に関してアッべ数と屈折の関係は下のサイトに記載されている
http://www.ohara-inc.co.jp/jp/product/optical/list/index.html#02
これからも最大で50くらいのアッべ数差が考えられるがここでは考えないが、
他の収差を考えるとアッべ数差を20ぐらいにとるのがよい
V1d=63.46、V2d=36.37のガラスでBK1とF2を選んでみる。
となり、1/f = 1/f1d + 1/f2d = 2(1/m) となり、狙い通りの焦点距離50cmの色消しレンズを設定できる。
製作を簡単にするためには、はじめの正レンズを両面が同じ曲面の凸レンズとしよう。
すると、半径R11dとR21dの絶対値は等しく符号が異なる。
またn1dはBK1で1.51009であるので、n2dはF2で1.62004である。
よってレンズの曲率を決定してみると、
となる。
今回のレンズでは、C線とF線の色消しに関して行った。ダブレット全体としての焦点距離を決めるのにd線を導入した。
また、2波長の色収差のみの補正であって、すべての波長の光に関して共通焦点を持つようにはしていないし、
他の収差に関して議論はしていない。
また、補足ではあるが、フッ化物(CaF2など)の異常分散をもつレンズを用いると3波長での色消しがダブレットでも構成可能である。
さらに3波長、4波長の色補正には、ほとんどの場合トリプレットが採用される。