Ray Optics
Aberration


単色収差

非点収差

非点収差とは物点が光軸からかなりの距離だけ離れていたら、入射してくる光線束のうち

ある断面の光線束はその面内で対称であるが、他の断面では光線束が非対称なることから、

主要収差の第3番目にあたる
非点収差(astigmatism)をもたらす。

上記のことをもう少し詳しく説明するために、下図を見ていただきたい。



光軸外に物点がある場合、光軸と物点を通る平面(
メリジオナル面)とその平面に垂直で物点を通る平面(サジタル面)に対して

それぞれの平面内の光線束の対称性は全く異なる。それぞれの平面に対して光線束を図にした下の図を見てもらいたい。

サジタル面内の
サジタル光線は主要光線(光軸を通過する光線)に対して対称な光線対が必ずある

しかし、
メリジオナル光線では主要光線に対する対称な光線対がないことがわかる。



この図からのわかるように、メリジオナル面内の光線束は主要光線が傾いたところから、さらに傾く必要があるが、

サジタル面内の光線束は、光軸と主要光線のなす面に対して垂直方向に広がっていることから

メリジオナル光線束よりはレンズに対して傾きが小さい。

このことは、ここでは示さないが、フェルマーの原理(光線は最短距離をたどる)により、
大きく傾くほうが焦点距離が短いという

事実を導かれるために(球面収差でも同じことがあった)、
メリジオナル光線束とサジタル光線束で焦点位置が異なる

つまりメリジオナル光線のほうが手前に結像するという
非点隔差(astigmatic difference)が生じる

この非点隔差は物点が軸より離れるにつれて急速に拡大する。



上図のように話を整理するとメリジオナル光線はサジタル光線よりレンズに近いの第一の像として先にメリジオナル焦点を結び、

サジタル光線は、逆に第二の像としてメリジオナル光線より奥のところで焦点を結ぶ。

メリジオナル焦点とサジタル焦点の差が大きくなると、点光源の第一の像と第二の像は線に近づき、互いに垂直になる。

メリジオナル焦点とサジタル焦点の間では最小となる円形像が存在する、これを
最小散乱円(circle of least confusion)と呼ぶ

このことが原因で以下の図のような興味深い効果がみられる。



非点隔差が増大すると、像の境界が不鮮明になって劣化する。特に興味深いのは、

メリジオナル焦平面は光軸に対して垂直方向はきちんと集光するためにボケない。つまり、図で言うとリングはボケないことを意味する

つまり、リングに厚みがあるようにボケるということは光軸に垂直方向は集光していないことを意味してしまうからだ。

また、サジタル焦平面おいては図における線分はボケないことになる。

さらに付け加えるとこれらのボケ方は光軸から遠いほど、画角があるほど、ボケ方が大きいことを意味する。

第二の像は(サジタル焦平面)においては線分が矢のように的の中心を射抜くかのように見えるため、

"矢の、矢状の"を意味するsagitta(サジッタ)という名前がある。

最近眼鏡やコンタクトレンズを新調した人は知っていると思うが、眼の乱視の検査においても、上記の図のような

放射状とリング状の形状がよく見えるかの検査をする。乱視とは非点隔差があるかどうかの検査であり、

眼の検査ではこれらの検査をきちんとやるようになっている。

最後に、知識としてだが、放物面鏡の用途はサーチライトや天体の望遠鏡に限られているのはご存じだろうか?

この理由は放物面鏡は非点収差とコマ収差のために軸外の像は全くお粗末な代物である。

そのためこれら二つの収差は画角を意識するものには使えず、視野の狭い器械に利用範囲が制限されているのである。