2.1 誤差を見積ることの大切さ
得られた値がどこまで正しいか認識したことはあるだろうか?
測定値は必ず不確かさ(誤差)が伴うため、
測定値 ≠ 真の値
よって、測定値が真の値にどれくらい近いのかを表す指標が必要である。
たとえば、銅線の抵抗が
25.000±0.001Ω
とする。この意味は、何度測定しても抵抗が24.999から25.001Ωの中に確実に
入っていることを意味しない。測定した値は±0.001Ωという確からしさで含まれていることしか
意味していなく、
本質的には測定とは確率的な意味合いを持っていること
を意識しておかないとならない。
さて、この実験結果は、世の中に発表されると発表者の手を離れ、一人歩きをする。いろいろな分野の人が
この抵抗の値を参考にし回路設計やら物理学で電子理論の検証に用いられたりする。
そのため、重要なことは、
そのデータが目的に足る精度(正確さ)をもつのかどうかである。
この信頼を獲得するには、
誤差をきちんと評価することは非常に重要である。
このことは
実験者が責任をもって果たさなければならない義務である。
では、実験をおこなう際に、どの程度の誤差を評価しなければいけないのかという問題に突き当たる。
いくらでも時間があればいくらでも精度を追い求めればいいが、現実問題そうは行かない。
通常は、
実験の最終的な目的に応じた精度を持つ結果が得られるよう、実験を計画し実行すべきなのである。
一般に、最終的な目的の値を直接測れることはほとんどない。そのため、個々の要素の実験を求め、
その測定結果を組み合わせて、目的とする物理量を得ることになる。そのとき、
「
ここの測定結果の誤差が、最終値の誤差に影響を及ぼす」ことになる
そのため、個々の要素の測定精度を考慮しなくてはならない。そして、個々の要素の測定誤差のうち
最終結果に一番効くと思われる測定誤差を最小限に抑えるように、すべての力を注ぐべきである。
2.2 系統誤差と偶然誤差
誤差には、2つに分類することができる。
偶然誤差(random error) ‥‥‥ 実験する際に常に存在し、真の値の周りを正負均等にばらつく
誤差
系統誤差(Systematic error) ‥‥‥ 測定において、真の値からある傾向のズレをもって存在する誤差
測定をする際に、気をつけないといけないのは、測定の過程が「結果として」偶然誤差が与えるのか、
系統的な効果を与えるのか、によってきまるといことである。
誤差の原因は本質的に系統的であるのか偶然的かではなく、実験の環境や、手法、条件などによっ
て、どちらの誤差も生む可能性があるということ。
2.3 系統誤差について
系統誤差が生じる理由は大きく分けると2つに分類される。
(1)理論での仮定と実験の設定が異なっているにもかかわらず、そのズレを考慮に入れなかった場合
抵抗の温度依存性の無視、異なる金属の接点における熱起電力の無視
(2)不正確な装置の特性(若干抵抗値を高く読み取ってしまう等)
系統誤差は、測定値が偶然誤差のようにランダムに起こるため発見しやすく、平均化することで
取り除けるような誤差ではないため、発見しづらく重大な誤りになることがある。
例えば、ミリカンの実験での、素電荷量の測定において、空気の粘性定数が小さく見積っていたため、
系統誤差となり、素電荷量は0.5%程度真の値からずれていた。
しかも、悲惨なことにプランク定数やアボガドロ定数などの基本的な物理定数はこの値を参考にして
いたために同様に系統誤差を含んでしまっている。
最後に系統誤差はこれといった見つけ出し方がないために注意を払うしかないという点だ。