エネルギー

4.1  簡単なエネルギー保存の導出

  


    高校のとき加速度一定において(等加速度運動のとき)以下の式を導出したことがあると思う。
                                
   
    この導出は、等加速度運動の式から(運動方程式から積分して)、
                     
                     
    を得て、ここから t を消去すれば出てきた。
    勘がいい人だったら。これを学んだとき、エネルギー保存則との関係を見出すことはできた
    のではないだろうか?
    つまり、両辺に1/2mを掛けることで、上の式は
                   
    さらに、移項して
                    
    右辺は一定(初速度なので、何か決まった値)になっているので、
    左辺の量は、全体として一定量を持つものとなっている。
    物理において一定量を持つものは、重要な量として扱うので、名前をつけることにしよう。
    や  がなにか意味を持った量なのではないかと考えてみることにし、
    前者を運動エネルギー(kinetic energy)、後者を位置エネルギー(potential energy)ということ
    にする。そしてその和を力学的エネルギー(mechanical energy)と名づけることにしよう。
    そして、次の節で、エネルギーとは何かということを説明しよう。



4.2 仕事とエネルギーの関係



   
 エネルギーが何かを話す前に、仕事という量を定義することにしよう。
    仕事とは、物体が運動しているときに、進んだ量と進んでいる方向成分の力を掛けたもの
    とする。式で書くとどういうことかというと、
              
    となっている。
    この定義をよく考えてみると、もし、物体が運動していても力が運動方向に対して常に垂直で
    あるならば、この物体は仕事をされていないことになる。(内積が0だから)
    また、力を加えていても物体それ自身が動かないならば、まったくもって仕事はしていない。
    なんてシビアなんだろ。結果を出さないと仕事をしたことにはならないのだ。

    やっと本題に入るのだが、以前仮定していたことを思い出すと、Newton力学においては
    やはり、あの仮定からすべてが導けるはずである。前節の簡単なエネルギー保存則の
    導出も、等加速度運動の式で実は運動方程式を使っている。
    そこで、運動方程式からエネルギーが何であるかを考えてみよう。
    運動方程式より 
           
    両辺にを掛けると、
            
    時間1から時間2までを積分すると、
          
    となり、

            
    であることがわかる。この式をエネルギーの原理という。
  
    これはどういうことかといいますと、ある二つの状態をとってきたとき、運動エネルギーの差は
    その間に行われた仕事の総和に等しいことをいっている。
    つまり、仕事をしてやった分だけ運動エネルギーを変化させるということだ。
    逆に、運動エネルギーの変化分だけ仕事をしていることになる。
    エネルギーとは、このように仕事をする能力がどの程度持っているのかを表す量である。
      
    ところが、注意したいのは、右辺が積分計算できるには物体の進む経路がよくわかっていて、
    その各経路の点において働く力がはっきりしているときで、それによって、左辺の変化量は
    計算される。
    一般的には、ある時刻の経路がわかるということは、運動がわかっていることになり、
    つまり運動方程式が解けていないといけない。運動を理解するという点ではエネルギーの原理
    は、運動方程式からたいして進歩していないのだ。
    じゃ、エネルギーの原理の式なんて意味ないじゃんというわけではない。
    この式にある条件を付け加えられたときに効果を発揮する。
    それは何かというと、経路自身を指定しなくても、物体の始めと終わりの二点の位置がわかる
    だけで、仕事が計算できるような力のことで、この力を保存力(conservative force)という。
    
    次に、力自身が保存力になっているときにはどのような関係があるのかを考えてみよう。
    この要求は少し数学的になるが、結果だけでもいいかもしれない。
    それは、あるスカラー関数 U(x、y、z) があり、この被積分関数の部分が
                 
             ,   ,   
    で書ける事になっているときで、これにマイナスをつけて、(これにマイナスをつけて強調して
    いるのはいるのは、スカラー関数の勾配に対して力は常に反対向きになっているから)
    そこで仕事は、
                 
    と書け、ゆえに、
               
    が導ける。いま、任意の二つの状態1,2関してこの式が成り立つということは、
    
                   
    が、任意の位置で成立する(経路に依存していない)。U(x,y,z)はポテンシャルエネルギーとか、
    位置エネルギーとか呼ばれる量である。
    以上より、
    保存力場(力が保存力で書け空間内)での運動というのは、運動エネルギーと位置エネルギー
    の和、すなわち力学的エネルギーを保存しながら運動をする。
    これを読んでいる人の中には、保存力であることの何がうれしいのかわからない人もいるだろう。
    しかし、保存力(万有引力、電磁気力など)に関してはたいてい調べられていて、U(x,y,z) の形
    はよくわかっている。つまり、仕事の部分がちゃんと計算できるということになっているのである。
    このことは、以前述べた経路を知らなくても、速さを特定できるという点で、運動方程式より
    一歩前進した式になっているわけだ。


4.3 ポテンシャルエネルギー(位置エネルギー)とは


    今までの議論で、運動エネルギーに関しては仕事と密接な関係にあることを述べた。それは
    以下の式から理解できたと思う。
             
    
    では、ポテンシャルとはどのような理解の仕方をすればいいのか。(今まで触れなかったが)
    ポテンシャルほどなじみの深いもので、言葉だけが先行しているものはないような気がする。
    この節を利用して、きちんと式と意味をはっきりさせようと思う。
    そもそも、ポテンシャル(potential)というのは、日本語では潜在的とか可能性という訳になる。
    これから考えるとしたら、ポテンシャルとは潜在的に何かをしてくれるエネルギーを
    持っていることを意味するのか?
    もともとの定義式
              
    から解釈すると、
    質点に働く保存力が仕事を行った分だけ位置エネルギーが減少することを意味する。
           
             
    そして、この式は等号で結ばれていたことを考えると、
    ポテンシャルの減少量分だけ、運動エネルギーに変換されていることがわかる。
    ということは、ポテンシャルエネルギーというのは、運動に変換するための能力のもった
    ひとつのパラメーターと考えることができるではないか。
    このことは当然でもある、なぜなら、ポテンシャルの導入はエネルギーの原理をにおいて
    力に特定の条件を加えたものなのだから。
    ただ、仕事が運動のエネルギーに変換されることとの意味の違うところは、
    相対的に位置によって、どの程度、運動に変換できるかが決まっていいるということだ。 
    例えば、ばねを縮めたときにこれは、次に運動をするための潜在的なエネルギーを
    その位置にみあった分だけを持っている。
    ポテンシャルの意味をもう一度言うと
    相対的にどの程度、運動エネルギーに変換できるかを表した量でもあるし、
    基準点を定めれば、位置によって、その大きさが一義的にきまる。

    相対的といったのはポテンシャルというのは定数分だけの任意性を持つということ。
    つまり、基準点を定めないといけないということ。
    式では
          は定数 
    をすべてのUのところに代入してもまったく議論が変わらないことから、基準点を決めないと
    決まらないということを最後に付け加えておこう。