Spontaneous & Stimulated emission : Laser

まずはじめに

 この節では今まで2準位系での吸収とその吸収時の電気感受率χを議論してきたが、この2準位系では通常レーザ発振に必要な

反転分布を起こすことはできず、レーザ発振しない。今日では様々な分野でレーザを用いた科学が発展しており

そのレーザに関して無知であることは許されなくなってきている。そこで、ここからはそのレーザに関して詳しく議論していこうと思う。

話の流れとしては

@自然放出と誘導放出に関して量子的な視点からの説明

Aレーザ発振に必要な共振器とは?

Bそしてレーザ発振条件とは?

Cさらに進めて波動方程式とレーザ理論から見えるレーザの性質

Dさまざまなレーザの種類

の5本立てでレーザに関して説明しようと思う。


自然放出&誘導吸収&誘導放出

自然放出とは、上の準位から下の準位に原子状態が緩和した時に、次に説明するように?ωに相当する1つの光子を放出する現象をいう。

まずは、今まで扱ってきた双極子モーメント相互作用がある時に、どの程度確率で上の準位から下の準位へ緩和するのかを述べる。

量子力学的に2準位原子のe、g準位間に双極子モーメントが存在するとき



で記載される相互作用ハミルトニアンがあった。これの電場を量子化したときの表式で書きなおすと



となる(位相項e(iωt)は省いている)。このような時間依存の摂動ハミルトニアンがある時の系の遷移確率は



となる。上記は二つの項に分けて考えることができる。つまり、



上記は遷移確率を二つの項に分けて考えているが、Winducedの遷移確率は場にある光子数がn個のときにそれに比例して

励起状態eから基底状態gへの遷移が起こりやすくなることを意味する。つまり、光が強いほど下の準位に誘導されて緩和するので

誘導放出と呼ばれる。二つ目の項は場の光子数に関係なく遷移が起こり緩和するため自然放出という。

さらに注目すべき点は上記の遷移確率We→gは|e、n>の量子状態つまりn個光子数を持つ量子場から|g、n+1>の量子状態

つまり(n+1)個の光子数を持つ量子場へのみ項が存在するので、励起状態eから基底状態gへ緩和するときには

場に1つだけ光子を放出して緩和することを意味する。

次に全波数空間でどの程度の自然放出の遷移確率が起こるのかを議論してみよう。

上式を全波数空間で和をとる。ω=ω(k)と波数に依存するので、



となりp()はモード密度であるつまり



である。よって、自然放出項を全波数空間で和をとった値は



となる。この値の意味は単位時間当たりにどの程度の確率で自然放出が起こるのかを示している。

よって、励起準位にN個の原子が単位体積当たり存在したとすると、その体積から光子が放出される確率はN*Wspontである。

このWspontの値(係数)を
アインシュタインA係数と呼ぶこともある。