ラマン光取得効率
ラマン信号を得ようとしたときに、ラマン信号は非常に微弱な信号のため効率をコストの範囲内で最大化する必要がある。光学効率を決める要素として以下の項目を考えることができる。
- 結像光学の結合効率(レンズなど)
- 分光器の効率(レンズや回折格子など)
- センサ感度
結像光学系の効率
以下のリンクに導出があるが、像面での照度E’(単位面積当たりの光束:光のエネルギーを人の目に感じる明るさに変換)と像側の開口数NA’との関係は以下になる。また、倍率β物体側の開口数NAとした場合も示す。
開口数の関係式 | 空間分解能と焦点深度, 像の明るさ (optics-words.com)
照度はNA’の2乗に比例しているので、明るい信号を得るためにはNAをあげる必要があることがわかる。一方で、ラマン散乱はレイリー散乱よりも10-6倍ほど微弱な光である。(下記参照)
ラマン分光法の基礎(1) ラマン分光法とは? | 日本分光株式会社 (jasco.co.jp)
わかりやすい物理 ラマン分光 ラマン散乱の古典論 (zak-science-labs.com)
より、単位時間に単位立体角を通って流れるラマン散乱エネルギー(古典論)は、
であるので、角度θだけ広がった円錐、つまりNA(=sinθ)だけ光学系で取り込めるとき、その時の立体角Ωは2π(1-cosθ)である。また、ラマン散乱は等方散乱とみなせるのと、上式に微小立体角dΩ/dθを掛けた値が取り込めるエネルギーになる。
また、ラマン散乱断面積:10-30~10-35cm2 (molecule-1 steradian-1 ) 、蛍光分子の吸収断面積:10-16cm2 (molecule-1 steradian-1 )といわれている。 _pdf (jst.go.jp) Hamaguchi Lab. – 不確定性限界に迫る超高速時間分解ラマン分光 (hamalab.com)
I0:入射強度、Ω:ラマン散乱断面積、S:面積、NA:開口数、R:光学効率(透過率とか)、λ:波長となる。
分光器の効率
回折効率が良い回折格子の調査をEdmund Opticsで行った。
回折格子 (グレーティング) | 透過型、反射型 | Edmund Optics
項目 | 高性能反射型グレーティング | ブレーズド回折格子 | Coherent® LightSmyth™ 透過型回折格子 |
---|---|---|---|
型式 | #37-126 | #43-752 | #16-859 |
価格[Yen] | 17950 | 11000 | 62350 |
効率[%] | 65 | 60 | 76 |
格子周波数[lines/mm] | 1200 | 1200 | 1398.6 |
寸法[mm] | 12.5□x6t | 12.7□x6t | 12.7□x0.95t |
URL | 高性能反射型グレーティング | Edmund Optics | ブレーズド回折格子 | Edmund Optics | Coherent® LightSmyth™ 透過型回折格子 | Edmund Optics |
このようにみると、効率を重視するとLightSmithであるが低コスト版を製作するにあたっては価格が非常に高い。一方でブレーズド回折格子であれば低価格で抑えられるが効率は15%ほど小さくなる。この低下分はSNに影響する為、平均化や露光時間拡大によって改善させることが良いだろう。
分光器とはスリットから入った光をレンズで平行光にして回折格子に照射し、回折された光を再度レンズでディテクタに集光させる。この際に分光器のスリットから出てくるNAとレンズNAは一致させておくのが良い。
レンズNAのほうが小さいとラマン散乱光量が減ってしまうし、逆に大きいと余計な迷光をひろう可能性がある。今回は一致させるので、光学効率は損失しないとする。光学部品の損失(レンズの透過率やセンサNA等)は別途検討する必要がある。
センサ感度
Degikey等で販売しているカメラセンサーで、まずは、感度が良く価格が安いセンサを調査した。
4万円行かないくらいで感度が60%も確保できるセンサがいくつかあった。レンズのマウントが異なる型式は除いてCマウントだけに限定すると、FFY-U3-04S2M-C、FFY-U3-16S2M-Cである。このカメラのスペックを見てみよう。
型式 | FFY-U3-04S2M-C | FFY-U3-16S2M-C |
---|---|---|
感度 [%] | 60 | 60 |
価格 [yen] | 37396 | 38110 |
Sensor size [mm]: L x W | 27 x 16.6 | 27 x 16.6 |
Pixel size [um]: H x V | 6.9 x 6.9 | 3.45 x 3.45 |
Resolution [pixels]: H x V | 720 x 540 | 1440 x 1080 |
Frame rate [fps] | 121 | 60 |
Readout Method | Global shutter | Global shutter |
ADC[bit] | 10 | 10 |
Exposure time | 29 us to 30s | 29 us to 30s |
Interface | USB 3.1 Gen.1 | USB 3.1 Gen.1 |
Sensor | Sony IMX297 | Sony IMX296 |
URL | FFY-U3-04S2MC-S-Datasheet.pdf | Powered by Box (boxcn.net) | FFY-U3-16S2MC-S-Datasheet.pdf | Powered by Box (boxcn.net) |
まとめ
項目 | 効率 |
---|---|
ラマン散乱効率 | 計測したい対象物のラマン散乱断面積や分子数に依存するため、別途評価。 |
回折格子 | 0.6(~0.76) |
分光器光学効率 | 1(部品が決まった際に別途評価) |
センサ感度 | 0.6 |
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